アメリカの大学で3年生の冬休みが終わろうとしている頃。
アメリカの大学に通う日本人の就職活動フェアである、『ボストンキャリアフォーラム』での就活準備を始めようとしている頃。
自分が、10年後、20年後に何をしているかを考える時間が増えました。

医薬品メーカーで、病気で困っている患者さんを助けたいな。でも患者さんに直接会ってコミュニケーションをとりながら、治療に結助けたいな…
それなら、看護師さんかな、アメリカならNP(特定行為認定看護師)かな?
いや、もっと細かく医学を私は勉強してみたい。



私、医師になっている自分と、10年後に会いたい。
そんなふうに漠然とですが、医学の道を志すようになりました。
医学の道を志したとき、まず目指したのは、アメリカの医学部でした。世界最先端の医療技術に触れ、グローバルな環境で学ぶことに大きな魅力を感じていたからです。しかし、長い準備期間を経て、最終的に私は日本の医学部に進学する道を選びました。その決断に至るまでには、多くの葛藤と厳しい現実がありました。
アメリカの医学部に進学するには、高い英語力や学業成績だけでなく、MCAT(医学部入学試験)、ボランティアや研究経験、さらには経済的な負担など、乗り越えなければならない壁がいくつもあります。私はそれらの課題に全力で取り組んできましたが、次第に「本当に自分が進むべき道はどこなのか」と自問するようになりました。
結果として、日本の医学部を選ぶことになったのですが、それは単なる妥協ではなく、自分にとって最も納得のいく選択でした。このブログでは、私がアメリカの医学部を諦めた理由、そして日本の医学部を選んだ背景について、率直に綴っていきます。同じように進路に悩む人の参考になれば幸いです。
アメリカの医学部入学システムについて(ざっくりと説明)
アメリカの医学部入学システムというのは、日本の医学部とは異なっており、高校卒業後4年制大学を卒業しないと入学試験を受験することはできません。基本的には、この4年制大学というのはアメリカの大学(もしくは英語圏の大学)でなければなりません。
そして医学部受験は、大学卒業直後からでも、一度ギャップイヤーを数年持ってからでも、いつでも応募することができます。ギャップイヤーをとる学生の中には、軍隊などでのキャリアを積んでから医学部受験を志す人もいます。もちろん学業成績であるGPAは上位90%以上の成績である3.6以上(4段階中)が必要な場合が多く、そのほかの課外活動への参加も重要になってきます。
加えて、医学部志望の学生は、4年制大学で「有機化学」「無機化学」「物理」などの理系科目の単位の取得も義務つけられており、これらの授業の難易度はかなり高いです。これらの授業をとりながら、GPA3.6以上を保つことは本当に大変なことです。
このようにアメリカの医学部に入学するには、並大抵の努力では受験のフィールドに立つことはできません。
そんな入学が難関なアメリカの医学部への挑戦をやめて、帰国し日本の医学部へ学士編入した私ですが、『なぜ日本の医学部を選ぶに至ったのか』そして『日本で入学して選んで良かった』と思うことについて、これからお話ししたいと思います。
私がアメリカの医学部受験を諦めた経緯について
受験について何も知らなかった
先ほど話したようなアメリカの医学部受験の過酷さを知ったのは、私が3年生の時でした。その時には、もうGPAも低い、課外活動もビザの関係で許される学内バイトとちょっとしたサークル活動程度でした。自分が急に医学部を目指し出すには、他の医学部志望の学生からは確実に遅れをとっていました。
3年生の時には、周りはMCATの勉強を始めていたり、推薦状のために研究活動を通して教授と仲良くなったり、病院ボランティアや企業インターンなどに参加していました。



勉強も課外活動も全部完璧にこなすこの人たちと、戦わなければならないの?!無理じゃないか??
私も一応、長期休みには病院ボランティアをしたり、そして研究室にも3年生から所属させてもらうなど出来る限りの努力はしてはいました。MCATの参考書なども常に開いて勉強していました。
しかし、学業も疎かにしてはいけないという状況がストレスになってしまっており、睡眠を削りすぎて体調を崩すこともしばしばありました。
GPAが足りなかった
正直に言いますと、アメリカの医学部なんておそらく合格できないくらいの低いGPAだったからです。難しい物理学の授業や、非ネイティブにとっての英文学の授業で基本的にGPAを下げてしまっていました。
MCATも悪かった。
受験生は基本的にMCATという試験の点数を提出しなければなりません。この試験は何回でも基本的には受験できます。(出来るだけ良い点数を、1度目の受験で取る方が試験官への印象が良いと言われていますが。)点数の範囲としては、全問不正解で472点で、満点は528点という少し変わった点数の付け方になっています。大体510点以上あると合格者平均くらいと言われています(受験大学による)。
もちろん私も、周りの学生に負けじとMCATへの勉強も進めており、模試なども受験して点数も安定してきたので、本番に挑むことにしました。その時は、大体500以上くらいをまず取れればいいなと思っていたのですが、受験後届いた成績表には、信じられない点数が書かれており、衝撃・落胆・後悔で涙を流したのを覚えています。



その点数は、私が行きたかったメディカルスクールへの合格なんて考えられない点数でした。
コロナが流行り始めていた
MCATの結果を見て落胆しながらも、日本の医学部受験についても調べていた頃でした。そして「学士編入試験」についても既に少しは知っている状態でした。(日本での受験を決定したわけではなく、まだそれでも第一志望はアメリカの医学部でした。)



「学士編入」ってアメリカの医学部入学制度を模して作られた制度なんだって!
じゃあアメリカの医学部がダメならば、日本に帰って学士編入受験するしかないな!!
日本の医学部受験が難関というのはもちろん理解していましたが、日本人がアメリカの医学部に入学するよりかは、少し難易度は下がるだろうと思っていた程度です。決して、日本の医学部を舐めている態度で考えていたわけではありません!
そんなことを考えている頃に、ニュースに少しずつトピックとして上がり始めたのが、
コロナウイルスの世界的な蔓延
日本でも感染者が観測され始め、また友人の親族が感染して入院したとかいう話を聞く頃になっていました。日本にいる家族にとって、娘1人がアメリカにいるという状況はとても心配で「感染したら数週間くらい日本に帰れなくなるかもしれないから卒業後は帰国しなさい」という内容を言われるようになりました。
これは私も予想していないことでしたが、2019年12月に私は本帰国することになりました。
つまり帰国を決めたことで、基本的にアメリカの医学部受験は諦め、日本での医学部受験に切り替えることとなりました。
帰国直後コロナウイルスによるロックダウンなどが世界的に起き、世界的な大混乱となったことは皆さんご存知の通りです。



コロナのせいで帰国してアメリカに残れなかったという後悔はありますが、あの頃の成績などを考えると、日本で医学部受験をしてよかったという気持ちの方が今は大きいです。
私は日本の医学部に入学して良かった点について
アメリカから帰国して日本の医学部学士編入に合格し、入学する前までは、「アメリカの医学部に行きたかったなぁ」「アメリカほど医学を学べないだろうな」という気持ちになることもありました。
しかし、今実際に日本の医学部に入学して思うことは、「そんな杞憂は不要だった」ということです。私がなぜ今そう思えるのか、入学後にわかった日本の医学部の素晴らしさについて話していきたいと思います。
日本とアメリカの医療レベルの差はそこまで変わらない
まず入学して感じたのが、日本の医療水準の高さは世界トップレベルであるということです。
地方国立大学でも最先端の技術力を持った先生が山ほどいるのが日本の医療水準の高さを示しています。医学生として学べる内容もとても深く、「私が学びたかった医学知識」を毎日浴びるように勉強できる環境が整っていました。
日本の医学部の学費が安い
アメリカの医学部は、日本の私立医学部レベル(それ以上)の学費が必要な場合が多く、奨学金を借りる学生がほとんどです。もともと4年制大学でも奨学金をもらっている学生にとっては、より一層金銭的な負担が上乗せされる状況に陥ることになってしまいます。
私も、受験を考えていた頃から金銭的な負担を家族にかけるかもしれないという不安がありました。しかし、日本の国公立医学部の授業料は、6年間でたったの360万円!
これは破格の学費です。家族やたくさんの人が払ってくれている税金で残りは賄われていることを考えると、感謝しかありません。
ちなみにニューヨークにある医学部(アルバート・アインステイン大学)は、投資家の妻であり元大学教授が総額1500億ドルのの遺産を寄付したことにより、学費が無料になるというニュースが有名です。
医学生はみんな面白い!



日本の医学部受験を乗り越えた人たちって勉強しか知らないような人たちだらけかな…
勉強が大好きで、趣味などの時間も勉強に充てているような生活を送ってきている学生ばかりかと想像していましたが、入学してみて驚いたのは本当に面白い人がたくさんいることでした!
- 天才的な暗記力を持った人
- 起業しようとしている人
- 超努力家な人
- 外国語がペラペラな人
- 医学をすでになんでも知っている人
- 実家がとんでもないお金持ちな人
- アニメやアイドル文化が大好きな人
- プログラミングが趣味な人
- とってもお茶目で面白い人 etc.
自分が出会ったことのない凄い人たちがたくさんいました。医学部受験の勉強だけでなく趣味や個性もさまざまで面白い発見を毎日くれるような同期です。入学してから本当に毎日楽しい日々を送っています!
母国語で医学が勉強できるって素晴らしい!
医学が母国語で勉強できる国は意外と少ないという事実をご存知でしたか?発展途上国などではまだ英語で医学を勉強しなくてはならない状況です。しか、日本では、江戸時代頃からの蘭学者や医学者の努力のお陰で、自分の言語で高水準の医学を学ぶことができます。
これがどれほど素晴らしいことなのかを感じることができる感性を育ててくれたのは、アメリカの4年制大学生活と医学部受験でした。
『一つの道を諦めても、別の道はまだ拓くことができる』
そんなことを学べる良い人生経験となった受験期間でした。
どこにいこうと「医学を学びたい」という意志こそが大事であると知ることができ、後輩などにもそう伝えています。
いかがでしたでしょうか、今回の記事。
日本の医学部への合格ができたこと自体が本当にありがたいことなのですが、そんな受験の前にこんなストーリーが私の人生には起こっていたんです。
一人一人の受験生に色々な物語があって、本当に面白いですよね。紆余曲折を経て、今医学部同期の学生一人一人の話も聞いてみたくなってきました。
他にも学士編入受験についての記事なども書いていますので、ぜひそちらも読んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。では、また別の記事でお会いしましょう